別つ

僕には兄がいた。 僕は兄に憧れていた。頭が良く、優しい兄に憧れを抱いた。僕も兄の様になりたいと思った。 その頃、僕と兄は魔法に夢を見ていた。古い文献らをある日、父が見つけて、僕たちにくれた。 僕たちは、その文献を読み漁り、魔法・・・いや魔術というものにどっぷりのめり込んだ。 兄と同じ知識を一緒に身に着けることに喜びを得た。 しかし心の中で僕の何かが動き始めた。嫉妬?羨望?その時の僕には分からなかった。 いつしか僕は兄を超えたいと思いだした。

私と兄は同じマサチューセッツ工科大学に属していた。 私と兄の学力、コンピュータ理論の知識、魔術の知識は同じレベルであっただろう。 しかし、兄は私に無いものを持っていた。 人望である。兄の性格は一番近くで過ごした私がよく知っている。 兄は大学を首席で卒業、その後大学院に進学を進めた。 私は大学院には進学しなかった。このままでは兄に勝てないからだ。 同じ道に進めても勝てないと悟ったのだ。私は大学内に友と呼べるものはいなかった。 他の者は皆、チャールズ・フィードの弟、それか根暗で気味の悪いイスマ・フィードとしか見ていないだろう。 実の親でさえ、私は兄の様に人に優しくはできなかった。疑問だったのだ。 自分よりも劣ってる人間に対し何故接してやらないといけないのか。私は他人よりも優れている。 兄もそうだ。しかし兄は違った。自分よりも劣っている他人を尊敬し、差別なく接した。 そんな兄が憎らしい。素晴らしい知識、能力を持ち、私と同じなのに。 大学の生活を経て、私はフィード家を出て行った。

あれからどれくらい経ったのだろう。私の手は真っ黒に汚れていた。 大学生時にある本を見つけた。その本は黒魔術を身にした者の日記、研究成果を纏めた物だった。 私はチャールズにその本を見せる事はしなかった。 これは私だけの本だ。その本は私の人生を大きく変えた。 黒魔術の実験を行うには人体が必要だった。 私はアメリカのあやゆる地域から人を誘拐、殺人、人体実験を行った。 もう何人使ったかは分からない。 ある者は実験により、凶悪は殺人者になったな。 ある者は人間爆弾。ある者は人から外れた物もいたな。 しかし私は満足には至らなかった。 私はある夢を持った。悪魔だ。悪魔をアッシャー界に降臨させることだ。 しかしうまくいかなかった。 当然だ。悪魔を召喚するのは並大抵の事ではない。 膨大な時間、儀式、素材。私一人では手が足りない。 だが私は一つの希望がある。それはコンピュータ理論だ。 大学の時にコンピュータ理論を学んでいる時から頭の片隅に密かに考えていた。 だがそんな事上手くいくのかと疑心暗鬼だった。 そう思っていた。

わしは衝撃を受けた。ISG(インターナショナル・サタニスト・ガーデン)をハッキングし、内部データを覗いた時だ。 日本の学生、中島朱美という少年が悪魔をコンピュータを用いての悪魔召喚を成功したという。 わしは居ても立っても居られないのだ。すぐにアメリカを飛び出し、日本に向かおう。 そしてわしは兄を・・・チャールズ・フィードを超えてみせる。